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P1000コラム

ソーシャルビジネスとは?

公開日:2016/2/20 

1.ソーシャルビジネスの定義

ソーシャルビジネスとは、社会的課題の解決を目的とし、そのために持続可能な自主財源を確保をするための事業活動の形を取り、加えて今までにない新しい商品やサービス、そして仕組を提供する活動です。このように社会貢献性・事業性・革新性という3つの要件を満たす活動をソーシャルビジネスと言われます。従って、利潤最大化を目的とする一般的なビジネスや事業とは区別され、さらに、寄付や助成に重きを置くボランティア活動とは峻別されるものです。
昨今では、NPOやNGOという法人に関わらず株式会社としてソーシャルビジネスを行う事業者も増えてきており、国家や地方行政単位での取り組み、さらに大学等でソーシャルビジネスを学ぶゼミや学部が誕生するなど、産官学のそれぞれの領域で注目されているビジネスの新しい形です。

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2.なぜ生まれてきたのか?

そもそもなぜソーシャルビジネスは生まれてきたのでしょうか?ソーシャルビジネスという動きが活発になり始めたのは、1980年代のイギリスにおける社会構造の変化が背景にあったとされています。その中でも、1980年代のイギリスを大きく変えたイギリス初の女性首相で、「鉄の女」と呼ばれたマーガレット・サッチャーの存在抜きには語れないでしょう。
それ以前のイギリスは「ゆりかごから墓場まで」と称される手厚い福祉政策を推し進めていましたが、サッチャー率いる保守党政権は市場への政府の介入や福祉政策を最小限にし、歳出の大幅な削減を実現します。このような政策方針が、経済成長の起爆剤になったことは事実ですが、失業率の上昇、格差の拡大などの社会の不安を増加させました。
やがて国民は、「ゆりかごから墓場まで」ではなく、サッチャー的な政策方針でもなく、「第三の道」を標榜したブレア政権を選びました。そこで重視したのが社会的企業、すなわちソーシャルビジネスに積極的に予算を投入することでした。
このようにイギリスにおける社会環境の変化が、ソーシャルビジネスの生まれてきた理由の一つと言えます。

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3.国内でのひろがり

ソーシャルビジネスという言葉が日本国内で世に広まった要因としては、バングラデシュのムハマド・ユヌス氏および同氏によって設立されたグラミン銀行が2006年にノーベル平和賞を受賞したことが大きいでしょう。同氏が行ったことは、少額の資金を無担保で貸し出すマイクロファイナンスと呼ばれるものです。事業開始当時は、バングラデシュの貧しい女性を主対象に貸し出していました。その後、マイクロファイナンスは貧困への解決策として世界的な広がりを見せ、主に後進国でのめざましい展開を実現しました。
グラミン銀行は事業対象および領域を広げ、「グラミン・ファミリー」と呼ばれるグループへと成長していきました。現在、日本での認知も進み、九州大学との研究センターの設立やユニクロを展開するファーストリテイリング株式会社との合弁会社をバングラデシュに設立するなど、急速な広がりを見せております。

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ただし、実は世に広く認知される以前にソーシャルビジネスという概念や言葉は日本国内に存在しました。きっかけは1995年の阪神淡路大震災です。この時、被災地への一刻を争う緊急的な支援として、多くのボランティアが活躍しました。その一方で、行政や企業だけでは解決することのできない課題が明らかになったのです。
これを受け、1998年に「特定非営利活動促進法」、世に言う「NPO法」が成立し、ソーシャルビジネスや社会起業家の概念が、浸透していきました。

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4.これからの展望

日本国内でのソーシャルビジネスの浸透は、大学生の進路にも大きな影響を及ぼしています。ボランティア活動をする学生の増加に比例する形で、学生の就職先の候補としてNPOやNGOなどの非営利組織として検討される時代へと突入したのです。また、社会的起業という選択肢もどこかの誰かのものではなく、選択すべきか否かという選択の土俵に上がってきたことも20年前と比較すると驚きの事実です。
「社会課題が昔と比較して増加しているからこそ、ソーシャルビジネスは生まれてきた」という趣旨の主張をしばしば見かけますが、実情は「昔も今も一定の社会課題があったものの、今は顕在化しやすい社会構造である」という方が正しいかもしれません。個人が情報を手軽に発信し、世界中の情報を瞬時に手に入れられる、情報の流動性が飛躍的に高まった昨今だからこそ、社会課題は露呈し、より認知され、それに伴いソーシャルビジネスという言葉や選択肢も一般的になりつつあります。
今後、隣近所のつながりが構造的な問題により薄れていくにつれ、人々はますます社会とのつながりを自身で選択的に取らざる得ない状況になっていきます。また、モノやサービスに満たされていくにつれ、精神的な満足を追求せざるを得ない状況になりました。時代は私たちの予想している以上に、私たち自身とソーシャルビジネスとの関係性について判断を要求するタイミングに差し掛かっているのです。

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